投資初心者ミナ
・成長株を探すにはどうすればよいの?
今回で第7回目となる「望月さん」に「投資の基本的な考え方」について聞いてみたシリーズです。望月さんは、パリで8年証券マンとして活躍し、警視庁の特別捜査官、投資の解説でラジオ日経のパーソナリティも務めていた投資の大ベテラン。いまはNPO法人の専務理事をしています。
NPO法人 専務理事 望月氏
今回は、「成長株」についてお話します。成長株というのはどんな株のことをいうのでしょうか。
1949年生まれ(70歳)。慶応大学法学部卒。旧・四大証券会社の1つ山一証券入社。新日本証券(現みずほ証券)の国際部(所長)としてパリに8年駐在。多数の金融商品に関して広い知識を持つ。また、警視庁(NY市警察)に、特殊捜査官として参画していた経験も持ち、多くの事例・投資手法にも精通している。 現在、経営コンサルタント。株式会社三技協顧問。NPO法人の投資クラブ支援会社「イカス」を設立。専務理事。公式サイトはこちら 元ラジオ日経「株式宅配便」のパーソナリティ。書籍「5年でお金を2倍に殖やす株式投資塾(あさ出版)」を執筆。 望月純夫Twitter @mussu104 |
目次
成長株の見つけ方
成長株とは?売上と増加率をみる
ここで全米投資家協会等が採用しているグローバル・スタンダードの基準に従って、成長株を判断していきましょう。
基本的に過去5年間、売上高が伸び続けていることが成長株の条件です。企業の規模により成長性にもハードルを付けており、規模が小さいほど、成長率のハードルは高くなります。企業規模と成長率との関係では、会社の規模は売上高で判断し、成長性は増収率(売上高の伸び率)によって判断します。
売上高と言われると、ピンと来ない方もいるかもしれませんが、ラーメン屋であれば、ラーメンの売上を含めた会社としてすべての収入の合計のことです。
- 売上高(うりあげだか)・・・企業の活動で発生したすべての収入。会社でどれだけ収入があったか?
年々どういった形で推移しているか注意深く見る必要があります。
増収率は、売上がどのくらい増加しているかを数値化したものです。
売上と成長率に関する成長株の条件は?
成長株の基準として、どのくらいの増収率(成長率)なら合格か?
企業の大きさ | 増収率(成長率)の基準 |
---|---|
売上高が4000億円以上の大規模企業の場合 | 過去5年間の平均成長率が5%程度であれば合格 |
売上高400億円以上4000億円未満の中規模企業の場合 | 過去5年間の平均成長率が7~12%以上であれば合格 |
売上高が400億円未満の小規模企業の場合 | 過去5年間の平均成長率が12%以上であれば合格 |
この基準に合致すれば、とりあえず第一関門が突破となります。
2つ目のポイント、利益がどのくらい出ているか
次に大事なポイントは、売上高に対して利益(経常利益)がどのように出ているかにあります。
- 経常利益(けいじょうりえき)・・・売上から原価や人件費などを引いた利益
ラーメン屋の例だと、売上から原価や人件費、家賃などを引いた金額が利益です。
経常利益の伸び率も重要な確認ポイントです。注意深くみてください。下の画像の例だと、2018年から2019年にかけて伸びが9%と落ちていますが、平均は14%の伸び率です。
企業の成長性を見るには売上高に対する経常利益の伸び率は2倍が目安となります。
企業の大きさ | 経常利益の伸び率の基準 |
---|---|
売上高が4000億円以上の大規模企業の場合 | 経常利益の伸び率は10%程度あれば合格 |
売上高400億円以上4000億円未満の中規模企業の場合 | 経常利益の伸び率は15~20%程度あれば合格 |
売上高が400億円未満の小規模企業の場合 | 経常利益の伸び率は25%以上あれば合格 |
「アメリカの投資クラブ流投資塾」を2002年に書いた頃は、該当する株として「パーク24」や「ヤマダ電機」、「良品計画」等が身近に感じられた企業として取り上げました。製造業としては、「ローム」「村田製作所」「ディスコ」等が該当する株でした。
改めて、経常利益とは
大事な業績の経常利益について、さらに詳しく説明します。
経常利益とは、異なる見方をすると、営業利益(本業で上げた利益)と営業外利益(受取利息や受取配当金など本業以外の利益)を足したもので、通常の事業活動によって発生する利益のことです。
- 経常利益(けいじょうりえき)・・・営業利益(本業で上げた利益)と営業外利益(受取利息や受取配当金など本業以外の利益)を足したもの
ラーメン屋の例ですと、営業収益の「ラーメン代の利益」に加えて、営業外収益は「株の配当など」、営業外費用は「銀行の利息の支払いなど」があたります。
経常利益は、本業の収益(営業収益)と本業外の収益(営業外収益)から構成されます。
3つ目のポイント、売上に対し利益の割合は?
さいごに、売上に対して利益がどのくらいあるか「経常利益率(けいじょうりえきりつ)」を見ることがポイントです。
経常利益率とは、売上高に対する経常利益の割合で、この比率が高いほど利益の割合が高く、儲かっている会社ということになります。
業績の分析で大事なポイントは、売上高と経常利益の伸び率を比較することです。成長業種であっても、行き過ぎた市場の獲得競争(過当競争、かとうきょうそう)が始まると経常利益の伸び率が鈍り、経常利益率が低下し始めていることがあるからです。
経常利益率が低下しだすと、早晩、上で解説した増収率も低下し出すと考えて良いでしょう。下の画像の例だと、経常利益率が2019年は下がっています。そのため、成長株としての基準が満たされない状態です。
成長株の条件まとめ
改めて、成長企業の判断方法についておさらいをします。
- 売上高は伸びているか(YES or NO)
- 売上高の伸び率は基準を満たしているか(YES or NO)、
- 売上高の伸び率は上がっているか(YESOr NO)
- 経常利益は増えているか (YES or NO)
- 経常利益の伸び率は上がっているか (YES or NO)
- 売上高に対する利益の割合は上がっているか(YES or NO)
このポイントをすべてYESで通過出来ると文句なしの成長企業と言うことになります。
成長株で資産2倍を狙うには
資産を2倍にする大作戦を成功させるには、
- 7%成長では10年
- 15%成長では5年
くらいの期間がかかります。そのためには会社の業績の伸び率が15%以上であることが大切なポイントです。
今回は、数値での投資判断方法をお話しましたが、数値で捉えるのか、感覚感性で成長株を捉えるのか、程度の差に過ぎません。個人個人の好みです。
難しいと考えるなら、数値については、ざっくりと確認して、まずは市場に入ってみましょう。市場に入ると、自分の意外な性格に気づくこともあります。食べず嫌いにならないことが大切です。
最後に改めて、
次回は、また異なる角度で学んでいきましょう。
それでは、賢い資産運用を。
NPO法人専務理事 望月氏